SUPERNOVA24’s blog

〇✖△…白か黒か…凸凹…0か100か…

捨てる『紙』拾う『紙』

       f:id:SUPERNOVA24:20200801090253j:plain

  長い坂道を登ると、いつものように小さな妖精たちが顔を出す。

『おはよう』と、扉の向こうから妖精たちが迎え入れてくれるが

  辿り着く先はいつも扉の奥。

 

  扉の奥には、さらに小さな妖精が住んでおり、朝でも昼寝をしている。

  寝息をたてる、その小さな妖精の寝顔を眺めながら、静かに横に座り

  今日も使われなくなった古紙を手に、ただ黙々と時が過ぎるのを待つ。

 

          f:id:SUPERNOVA24:20200801083652j:plain

 

 

      『なに作ってるの?』

 

  ふと、誰かに問いかけられた。

 

  振り向くと、大きな荷物を抱えたおばあさんが、こちらを覗き込んでいる。

 

       『・・・?』

 

  何を作りたいのか、特に定めることなく

  ただ、黙々と古紙に触れていただけだった

 

 『箱・・・』と、返すと

   おばあさんは、『すごいね』と返してきた。

 

       『すごい・・・?』

 

  何も考えず、ただ、時が過ぎるのを待つ為に

『何をしようか』と、そこに存在するだけの日々。

 

 どれだけざわついていても

 その場所は、何も言わずに

 存在を受け入れてくれた

 

        『邪魔されたくない』

 

 どうにか回避しようと考えるが、その場所から動けない。

『すごいね』と返された驚きよりも『逃げたい』感情の方が先だった。

 

      『こんにちは』

 

  小さな荷物を背負いながら、長い坂道を登ってきた妖精が顔を出す。

『いらっしゃい』と、妖精に声をかけるおばあさん。

 

  その瞬間、おばあさんがゆっくりと離れていくのに気づいた。

 

      『解放された』

 

 どのくらい時間が流れたのか・・・

 昼寝をしていた小さな妖精たちが目を覚ます。

 

 もうすぐいつもの時刻になる

 

 まだ目覚めない小さな妖精たちの枕元に

 今日もまた、ここに存在した『証』を残す

 

                                      f:id:SUPERNOVA24:20200803165311j:plain


  翌朝

 

  今日もまた、いつもと同じように長い坂道を上り

『おはよう』と、小さな妖精たちが迎え入れる。

 

  靴を整え、扉の奥にある目的地まで向かう途中

  机の上に散りばめられた『古紙』が視界に入った。

 

  妖精たちは、古紙を手に、思い思いに触れていた。

 

  ひらひらと古紙を仰ぐ妖精

  ぐしゃぐしゃと古紙を丸める妖精

  たくさんの色を使い古紙に絵を描く妖精

  びりびりと古紙を破る妖精

  ペタペタと古紙を貼る妖精・・・etc

 

  はしゃぐ妖精たちを眺めながら 、あることが気になった。

 

      『誰も折っていない』

 

 辿り着く目的地は目の前にあるのに

 なぜ折らないのか、疑問の方が先だった。

 

            『触れてみる?』

 

 振り向くと

 

 背中に、小さな妖精を抱えた、あのおばさんがいた。

 

 いつもなら一人の空間を『邪魔されたくない』と

 その場から、回避することを先に考えるのだが、

 古紙と触れ合う妖精たちが気になり動けない。

 

 何故、ここから動けないのかと模索していると

 ふと、古紙に触れる妖精たちの手に目が止まった。

 

     『折れないのではなく、折り方を知らないのだ』と。

 

  小さな妖精たちに比べ

  自分はこれまで幾度となく

 『紙』に触れてきた。

 

 でも、ここで過ごす妖精たちは

 まだその領域を通過していない。

 

            『教えたい』

 

  脳内で、両極端な悪魔たちが暴れる

 

 人と関わることを恐れ

 人を信頼できない自分が

 人に教えるなんて不可能だ

 

 それでも

 

 そんな自分を古紙は

 何も言わずに受け入れ

 寄り添ってくれた

 

『もういいんじゃない?』

『自分をゆるしてあげようよ?』

 

 ぐしゃぐしゃに丸められた古紙が

 ぐしゃぐしゃの私にささやく。

 

 

 いつもなら

 

 簡単にゴミに捨てられてしまうはずの古紙が

 動けない自分を必死で応援している。

 

   私でも誰かを救うことができる?』

 

 気付くと

 

 古紙が置かれた机の周りには

 小さな妖精たちが嬉しそうに

 私の折り方を真似していた。

 

 決して綺麗な『紙』ではないかもしれない

 

 でもきっと

 

 今日もまた

 誰かの手に触れ

 命を吹き込まれる

 

 そんな存在に

  私もなりたい・・・

 

      『いっておいで』

 

                        f:id:SUPERNOVA24:20200803161405j:plain

 

      『きっと大丈夫・・・☆』